轆轤教室(3) 懐が深い椀を挽く
欅の生木でひとしきり練習したあと、谷口龍人先生が、どういう形をつくりたいですかと尋ねられたので、自宅で使っている拭き漆の輪島塗のお椀の形を説明しました。
結婚式の引き出物ですが、そのお椀は真ん中の部分が少し膨らんでいて、飲み口が若干すぼまっているのです(写真)。
そういう形を懐があるというようです。内側が凹面になっているのでそう言うのでしょう。
その話をすると、これを見ながら挽いてみてくださいと、まさにそういう形のお椀の木地を谷口先生が持ってこられました。
まずは外挽きです。木地は桜です。注意しなくてはいけないのは、凸面の上半分は挽かないということです。すぐに外側を全部挽いてしまいたくなるのですが、それはしません。
お椀の外側の下半分と高台を挽きます。
高台は斜めにテーパーをかけ、内側をお椀の底まで挽かず、球状の凹面で構成してみました。楽しい作業です。
またお椀の底に近い部分は、なるべくテーブルと平行になるようにしました。挽くのが難しいです。
上半分は、内挽きの際に厚さを勘案しながら挽きます。谷口先生に取り付けていただき、外側の上半分を曲線がなだらかに連続するように挽いていきます。
やっていたら、かなり口が窄まってしまいました。そうしたら、谷口先生が「初心者の挽く形じゃないですよ」と笑いながら仰ったので、ちょっと嬉しくなりましたが
じつは褒めているのではなくて、口が窄まり、懐が深くなると鉋の刃先を当てにくくなるのでした ![]()
それでも、谷口先生はこれまで、刃先の当て方を間違えていたり、危険なことをしているとき以外は、駄目だと言われたことはありません。
窄まった飲み口の内側を挽く際は木地が欠けやすくなるので、そうならないような刃先の動かし方を教えてくださいました。
先生のアドバイスに従って、慎重に刃先を動かしていきます。やはり、飲み口が狭いので、内部のきつい凹面を挽いていると、時々鉋が飲み口に当たってしまいます。
それでも、少しずつ薄くなってきました。でも、刃先を木地に当てる技術が稚拙で、摩擦音だけで挽けていないことも多くなります。
結構、底のほうまで挽いたつもりでしたが、谷口先生がまだこれくらい挽けますよと、厚さを教えてくれます。まだの底のほうに木地が残っているのです。
とうとう、技術の限界に達し、結局、最後は谷口先生に挽いていただきました。
すごい苦労していたのに、谷口先生が鉋を当てるとすぐに切りくずが飛んで、あらら、あっという間に挽いてしまいました。プロの技術はすごいのです ![]()
なので、今回の内挽きの仕上がりはとてもきれいです。
谷口先生はお椀を轆轤からはずし、碁石入れのような丸いお椀をひとしきり眺め、やがて飲む仕草をしました。
懐を深くすると、汁物を最後まで飲みきるためには、椀を高く上げて顔も天井を見るくらいに上げないといけません。つまり、使いづらいのです。
お椀がどの産地の漆器でも同じような形になってしまうのは、使いやすさを追求していくとそういう形になってしまうのではないかと、谷口先生は仰います。「用」と「美」の「用」の部分です。
また、蓋を作るといいかもしれないと言われ、蓋ものの作り方の順序を教えてくださいました。蓋を先に挽いてしまうのだそうです。そして、蓋のラインと連続的につながるようにお椀を挽いていくのだそうです。
今回の作業では、難しい形を選ぶと挽く作業も大変なことになるのだ、と痛感しました。また、使う際のことも考えないといけません。
今回も木地を挽くだけでなく、木地の動きのことなどと併せて大変勉強になりました。谷口先生、ありがとうございました。
今回で椀木地の制作はひとまず終了し、次回は、カップに挑戦します。
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